「史の会(ふみのかい)」とは

 神奈川県立婦人総合センター・かながわ女性史編集委員会編著『夜明けの航跡―かながわ近代の女たち』 

(ドメス出版、1987年刊)の編纂に際し、専門委員だった江刺昭子が大正期を担当したワーキンググループに呼びかけて、1988年10月に発足した女性史の研究会。代表は江刺昭子。

出発にあたり、神奈川の近・現代女性史の研究を目的に、女の目と地域の目で、あたりまえの女たちを対象に、そして何よりも女性解放の視点を大切にすることを共通認識として確認。会員各自がテーマにそって調査、研究したものを小論文にまとめ、研究誌に発表することを目標に掲げた。毎月第3木曜日に神奈川県立婦人総合センター(→神奈川県立かながわ女性センター→かなテラスと改称)で例会を開き、資料収集や取材の学習を重ねながら、研究の進行状況の報告、話しあいを積みあげる集団学習方式。活動記録を残すために毎回『史の会通信』を発行し、2018年5月現在、355号に達している。 

研究誌の刊行後は、シンポジウムと県内の女性史研究グループとの交流会を開催し、神奈川県内の女性史研

究の普及拡大に努めた。          

大倉山記念館(小池三恵子画)
大倉山記念館(小池三恵子画) 

※ 江刺昭子へのお問い合わせは、esashi-o☆yg7.so-net.ne.jp  へお願いします。

                                           (☆印を@に変えて送信してください)


「史の会」主な活動実績


創刊号『史の会研究誌―大正の響きをきく』

 

1991年8月、『史の会研究誌』第1号を刊行。B5判211ページに論考14本所収。大正期を共通テーマにした論文名は、「未知なる世界=フェリス和英女学校に集まった少女たち」、「ますら男ならぬ女とて―横須賀高女の初期の教育」、「自己と時代に目覚め、使命に生きた女たち―横須賀市小学校女教員会について」、「大正期の中等教育を担った実業補習学校―高座郡を中心に」、「皇国の母たちの少女時代―鎌倉郡の処女会」、「県内生活改善運動の実態」、「罪深き女なれども―「新しい女」の姑斬り事件」、「『横浜貿易新報』にみる大正期―目覚めと社会通念のはざま」、「白金の途を選んだ小鳥―断髪洋装の作家・大橋房」、「雷婆さんと呼ばれても―二宮わかと安次の社会事業」、「女たちの軍事援護活動―渡辺たまを中心に」、「富士瓦斯紡績保土ヶ谷工場で働いた女性たち」、「大正期・神奈川県における自殺者の動向」、「大正期『横浜貿易新報』にみる神奈川の娼妓たち」。いずれも、これまで取りあげられていないテーマに取り組んだ。足で歩いて資料を探し、人に会う。手間暇を惜しまないことを厳しく課した結果の力作である。


第2号『史の会研究誌~時代のうねりを見つめて~』

1993年10月刊行。B5判276ページに論考13本所収。

 

「フェリスにおける天皇制」、「横浜市域における実業補習学校」、「女教員会のゴッドマザー―石川ふさの生涯」、「横須賀の実科高等女学校―田浦実科高女を中心に」、「『女学世界』に咲いた花―内藤千代子について」、「モザイクの海へ―大橋房の作品について」、「あなたは・たとえば・大輪のカトレア―『痴人の愛』ナオミのモデル 小林せい子の虚像と実像」、「港の別れ―横浜時代の福田英子」、「神奈川の青鞜社・新婦人協会員―付録・岩淵百合小伝」、「横浜の初期看護婦養成」、「根岸の丘の赤病院―横浜婦人慈善会を支えた女性たち」、「『神奈川新聞』にみる女性の動き―太平洋戦争開戦前夜」、「明治前期新聞にみる神奈川の娼妓たち―解放への途いまだ遠く」。

 


第3号『史の会研究誌~時代の目覚めをよむ~』

 1996年7月刊行。B5判276ページに論考10本所収。

 

「女による 女のための活動―横浜婦人矯風会の五〇年」、「時代に目覚めハマに集った女たち―横浜市小学校女教員会について」、「笛は吹かれたが…―大正期における県内生活改善運動の実態」、「紅蓼の花のすがしさ 菊池ミツ―女性解放運動から平和運動へ」、「横浜ベル・エポックの女 北林余志子」、「神奈川の文学に見る学校風景」、「『性の奴隷』解放への闘いと苦悩と―神奈川県廃娼運動の史的考察」、「縁かがりで綴った一二〇年―横浜スカーフの歴史を支えた女たち」、「女性の政治参加―藤沢市の戦後一〇年」、「二〇世紀を学ぶ中学生―イギリスの歴史教育」、「史の会のあゆみ」。


第4号『史の会研究誌~女たちの物語を再生する~』

2001年2月刊行。B5判248ページに論考10本所収。

 

「基地に生きる女性たち―横浜・横須賀の基地と買売春」、「花嫁道具はボロとつけもの石―横浜の『大陸の花嫁』訓練所」、「しなやかに そして たくましく―草分けの女性洋画家・亀高文子の生涯」、「アレキサンドライトの呪縛を越えて―女優・衣川孔雀小伝」、「神奈川に見る女医の軌跡」、「繭と生糸に働く女性たち―高座郡に見る養蚕・製糸業」、「婦選獲得同盟と神奈川県―付録 大内光枝小伝」、「不屈の求道者・溝上泰子」、「地域女性史編纂の問題点―『千代田区女性史』を編纂して」、「歌人 杉浦翠子に関する新事実」。


江刺昭子+史の会編著『時代を拓いた女たち―かながわの131人』

2005年4月、神奈川新聞社より刊行。四六判300ページ。

神奈川県の女をテーマに研究活動を続けながら気になったのは、既刊の出版物にあまりにも女の視点が欠落していることだ。『神奈川県史別巻 人物編』を例にとると、取りあげられている人物4470人中女は146人、3.6%にすぎない。その半分は前近代の人で、近現代の70数人も中央での活躍で有名な人がほとんど。それなのに孝女節婦が入っている不思議な人選。

そこで、これまで史の会が積みあげてきた研究成果をもとに神奈川女性人物事典を出版することとし、2001年からカード作りを開始。できるだけ広い分野、県内全体に目配りしながら700人余のカードを作成。その中から、近代の神奈川県で成育し、学び、なんらかの社会活動をし、一定の影響力のあった人131人を選び、対象人物の生涯を簡潔にまとめ、時代の中での位置づけを明らかにし、エピソードや写真も入れて文章化。例会でそれぞれの原稿について繰り返し意見交換、文章を練りながら書きあげたミニ評伝集。

収録人物秋元松代・浅見ハナ・足立原マサ・厚木たか・吾妻光・阿部クニ・阿部ケイ・五十嵐ハル・石川ふさ・石阪美那子・石渡満子・伊東静江・伊藤銓子・伊藤野枝・稲垣きくの・稲垣寿恵子・井上房江・岩崎春子・岩淵百合・ヴァンペテン カロライン・薄井こと・梅田ナカ・梅津はぎ子・江口章子・江守節子・大館可免・大野英子・大橋シゲ・岡野貴美子・岡本かの子・岡本花子・奥津久恵・小倉ミチヨ・小倉遊亀・長田かな子・小沢路子・風戸須賀・加藤梅子・神近市子・川喜田かしこ・川崎弘子・川田定子・菊池ミツ・岸田俊子・キダー メアリー・北畠八穂・北林余志子・衣川孔雀・桐山イソ・久保田寿枝・黒川フジ・小林礼子・衣川舜子・榊原ツマ・坂倉スミ・桜井キン・ささきふさ・佐々城信子・颯田本真・佐藤美子・沢田美喜・朱絃舎浜子・城ノブ・杉田鶴子・鈴木ビアトリス・須田開代子・積しな・高木鐸・高田敏子・高松ミキ・竹腰美代子・辰巳浜子・丹波美佐尾・千葉キク子・土田康・土志田和枝・中里恒子・中根澄子・新名百刀・二宮ワカ・野沢節子・パヴロバ エリアナ・萩原タケ・朴敬元・長谷川時雨・林喜代子・林貞子・葉山ふゆ子・葉山三千子・早見一十一・原モト・ピアソン ルイス・平塚らいてう・平沼千代子・平野恒子・広津桃子・フィンチ エステラ・深沢淑子・福田英子・星野立子・牧野よし・真杉静枝・松尾トシ子・松川サク・馬淵テフ子・丸エキ・美空ひばり・宮本せつ子・村井米子・メール マチルド・望月たか子・籾山サク・森律子・諸節トミエ・山川菊栄・山口スエ子・山口富美子・山田千代・山田わか・山本コマツ・山本安英・湯本アサ・養老静江・横川楳子・吉田セイ・吉野登美子・吉屋信子・若松賤子・渡辺たま・渡辺はま子・和辻照


江刺昭子+史の会編著『時代を拓いた女たち―かながわの111人』(第Ⅱ集)

 2011年6月、神奈川新聞社より刊行。四六判二七〇ページ。

『時代を拓いた女たち―かながわの131人―』刊行後、『神奈川新聞』に連載が決まり、同じ方法で新たに100人について執筆し、2008年1月から2010年2月まで週1回掲載。これに加筆して、『時代を拓いた女たち―かながわの111人―』(第Ⅱ集)として刊行した。

 

収録人物=秋間為子・浅野サク・浅葉スミ・飯沼フジ・井口小夜子・石川すず・石川雪・石橋志う・市野キミ・上原とめ・大江美智子・太田静子・大藤ゆき・大村はま・小笠原のぶを・小川玉子・沖津くら・お龍・賀川ハル・片岡球子・亀高文子・川上喜久子・川西多鶴子・河原操子・カンヴァース クララ・キクヤマタ・岸田麗子・草山朝子・葛生志ん・久保田真苗・ゲイマー康子・九重年支子・小桜葉子・小谷喜美・小南ミヨ子・坂井泉水・榊原千代・坂西志保・指田静・佐藤金代・佐藤哲・沢村貞子・ザンダー ヘレン・四賀光子・芝山みよか・島崎静子・清水きん・荘司福・杉原幸子・鈴鹿俊子・鈴木トヨ・鈴木ナカ・鈴木芳如・鈴木ルリ子・高木君・高杉幸子・高橋展子・田口安起子・武田百合子・田中絹代・田中君枝・田沼志ん・田村俊子・藤間身加栄・時田田鶴・土光登美・所美都子・十時延子・ドレーパー シャーロッテ・内藤千代子・中倉千鶴子・中村キヌ・中村テル・七々扇小橘・新妻伊都子・西川千代・野村ミチ・ハジス オリブ・久野タマ・尾藤朋子・平岡静子・平野藤・富貴楼お倉・ブリテン ハリエット・古屋満寿・紅沢葉子・ベルトラメリ能子・星野あい・本多マサヲ・牧羊子・松島彜・三浦澄子・三角錫子・溝上泰子・三淵嘉子・三村千代子・三宅春恵・宮地淳子・陸奥イソ・村木キヨ・室原富子・望月富士子・森田美知子・八木橋きい・安井かずみ・山川えん・山口小夜子・山代巴・山田寿子・与謝野晶子・渡辺幽香


第5号『史の会研究誌~「武相の若草」を読む~』

2016年5月20日刊行 編集・史の会 発行責任 江刺昭子 B5判 275ページ

頒布価格 1500円+送料360円

『武相の若草』は、神奈川県男女青年団の機関誌で、1924年から38年まで167冊刊行されている。戦前の社会教育を研究するには欠かせない第1級資料。これを読み込み、女子青年に焦点をあてて分析した。半官半民の青年団は、上からの押し付けをそのまま実行した戦争協力団体とするのが通説だが、必ずしもそうとはいえず、文芸に力を入れたことで、ごく普通の農村女子が驚くほど豊かな自己表現をしている。しかし、ファシズムが進行するとともに萎縮、変容していくのが裏付けられる。内容は以下。

 『武相の若草』発行年月日、神奈川県・郡・市・町・村地図(中積治子)、「『武相の若草』167冊を概観する」、「神奈川県連合女子青年会の誕生とその後の活動」、「高座郡における処女会・女子青年会の活動」「寄稿・投稿に見る期待される女子青年像」、「文芸欄に見る農村女子の暮らしと思い」、「女性公務員の先駆け―井上常子と女子青年会」、「女子青年会指導者から花嫁学校経営へ―原モトの軌跡」、「『武相の若草』会況欄年表」「史料紹介 ささきふさ(大橋房)の書簡及び学生時代の作文など」、「史の会27年のあゆみ」、「地域女性史アーカイブス設置を求めて―史の会の活動を中心に」。



☆『史の会研究誌』は、インターネットでご覧いただけます

2013年5月、NPO法人「ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)」のサイト上にミニコミ電子図書館が開設されました。日本のフェミニズムを草の根で支えた紙媒体のミニコミ誌を電子化することで、世界中のどこでも、いつでも、誰でも自由に見ることができます。ネット上に女性問題や女性史の書庫ができたということになります。史の会も研究誌1号から4号をアーカイブ化し、ミニコミ電子図書館に収蔵してもらいました。閲覧を希望する方は、以下にアクセスしてください。

認定NPO法人「ウィメンズ アクション ネットワーク(WAN)「史の会研究誌」ページ ☜ クリックしてください

 

☆『時代を拓いた女たち』の資料は、かなテラスで閲覧できます

「史の会」では、「『時代を拓いた女たち』Ⅰ、Ⅱ集の執筆に用いた資料を、2014年8月、神奈川県立かながわ女性センター図書館に寄贈しました。女に関する文字資料は少なく、長い時間をかけた地道な調査が必要です。著名ではない人物を多くとりあげた『時代を拓いた…』執筆にあたって、会員は関係者に取材したり、資料の提供をしていただくなど苦労をしました。そうして集めた資料を次世代の研究者に引き継ぐために、242人分の資料を同一基準で整理したリストをデータ化し、女性センターに寄贈しました。しかし、県の財政難等を理由にかながわ女性センターは8分の1に縮小、移転しました。これに伴い、寄贈資料は横浜市西区の神奈川県立図書館「女性関連資料室」に移管されましたが、未公開のままでした。話しあいの結果、2016年3月、かながわ女性センターの後身であるかなテラス(神奈川県立かながわ男女共同参画センター)に再移管されました。「行政文書」として同所のバックヤードに保管されており、希望者は閲覧することができます。以下に連絡してお出かけください。

251-0025 神奈川県藤沢市鵠沼石上2-7-1

神奈川県藤沢合同庁舎2階 電話0466・27・2111 

小池三恵子画
小池三恵子画